開演前

ミュージカルは、音楽、歌、台詞およびダンスを結合させた演劇形式。ユーモア、ペーソス、愛、怒りといったさまざまな感動要素と物語を組み合わせ、全体として言葉、音楽、動き、その他エンターテイメントの各種技術を統合したものである。

パリで演じられていたオペラ・コミックを発端に、『地獄のオルフェ』(天国と地獄)を作曲したジャック・オッフェンバックに影響を受けたヨハン・シュトラウス2世がウィーンでオペレッタ(ウィンナ・オペレッタ)を発展させた。それがベルリンオペレッタで近代化し、さらにハーバート、フリムル、ロンバーグらがアメリカに持ち込んでニューオーリンズで行われていたショーとなり、ミュージカルが誕生したと言われる。

最初はストーリー性がなくショウ的要素の強いレビューが中心だったり、男女の恋愛を描きハッピーエンドに終わる単純なストーリーの作品が多かった。そのころの代表的作品としては、レビューを中心とした出し物を演じて一時代を画した『ジーグフェルドフォーリーズ』などがある。その後、徐々に人種問題やエイズなど社会性の高い問題を取り入れて複雑なストーリーを描く現代的ミュージカルに発展してきた。現代的なミュージカルの最初の作品は1927年の『ショウボート』であると言われる。その後、アメリカの移民問題をテーマとし、クラシックやジャズなどをたくみに融合させた『ウエスト・サイド・ストーリー』、ベトナム戦争を主題としロック音楽を取り入れた『ヘアー』、主役の背後にいる無名のダンサーたちに焦点を当てた『コーラスライン』、エイズや同性愛を扱った『RENT』などが作られるようになった。

もともとミュージカルはアメリカで作られたものなので、ブロードウェイがミュージカルの中心地であったが、1980年代になると完成した『CATS』、『レ・ミゼラブル』や『オペラ座の怪人』といった、イギリス生まれのミュージカル作品が世界を席巻し、トニー賞もイギリス作品ばかりが受賞する事態に陥り、一時はブロードウェイ発のアメリカ産ミュージカルの存在感が薄くなった。『クレイジー・フォー・ユー』のリバイバル上演でようやくアメリカ産ミュージカルは息を吹き返す。

現在は、ニューヨークのブロードウェイとロンドンのウエスト・エンドがミュージカルの本場である。近年はウイーンでもミュージカルが作られており、『モーツァルト!』や『エリザベート』といった作品が人気を得て、日本でも繰り返し上演されている。

1994年、映画大手のディズニープロが『美女と野獣』でブロードウェイに進出し、大資本を武器にブロードウェイ演劇を圧倒するのではないかと話題となった。『美女と野獣』は自社のテーマパークのスタッフを起用したためか、評論家の間ではミュージカル的ではないとさんざんな評判だったが、2作目の『ライオンキング』で前衛芸術家ジュリー・テイモアを演出家に起用し、実験演劇的な衣装デザインと舞台装置で高い芸術性を獲得してトニー賞を受賞した。